概況
前会計年度(2004年4月~2005年3月)の売上高は360,463,300円(前期比19.0%減)となりました。 この期は事務所移転費用の発生による特殊要因がありましたが、売上、利益ともにほぼ予想の範囲に収まり、前期決算時の予測で示した通りの着地となりました。 このように業績予測が正確なのは、システムプロジェクトの平均的な資金回収期間が約1年であるために、当社財務には1年後の業績を概ね見通せてしまうという特性があるためです。
その他財務項目については、事務所移転と開発機器更新に伴う費用発生があったものの経費水準は前期並みであり、株主資本比率(自己資本比率)は94.9%となりました。 当社は設立当初から無借金経営、黒字決算で借入金がなく、販売製品は100%内製であり買掛金もほとんど発生しません。 したがって、非常に健全な財務内容となっています。
今期は、前期からの受注案件を消化する一方で新規の大型案件を並行してこなさなければならない大変忙しい時期にあたります。 このうち一部は今期中に計上されるため、売上、利益ともに過去最高となる見込みです。
当期売上高
360,463,300円
昨年度の売上高には、主力の統合リスク管理システム製品 PortfolioBrowserと、ALM(資産負債管理:アセット・ライアビリティ・マネジメント)製品 Altitudeが貢献しました。
当社は大手の金融機関から直接受注して製品開発を行うパッケージソフトウェア業であり、販売商品は自社開発ソフトウェア製品です。 外部のシステムインテグレーターを介した契約はなく、仕事の外注も行っておりません。 従って仕入れも在庫も基本的に存在しません。 販管費の大半は人件費が占めております。
資産の状況
金融資産については安全性と流動性を重視し、普通預金と円建ておよびドル建てのMMFに分散して保有しております。 定期預金、運用目的の長期資産、節税目的の保険資産は一切保有しておりません。 固定資産は大半がコンピュータのハードウェアです。 すなわち、当社資産は超短期かつ流動性のきわめて高い資金ポジションになっております。
資本の状況
資本金 50,000,000円 + 準備金 211,178,000円 (2005年3月決算後)
資本勘定の211,178,000円は法令に定めるプログラム等準備金です。 租税特別措置法第20条の2第1項及び第57条第1項の表の第1号の中欄のロに規定する汎用プログラム(制御プログラム以外のもの)として、情報処理振興事業協会にソフトウェア登録。 登録番号 25295。 登録年月日平成11年2月28日。 このプログラミング等準備金については法令改正(廃止)が決まっており、当社では2004年3月期決算から逐次取り崩しております。
株式保有状況については、当社の取締役3名が当社株式を100%保有しており、外部との資本関係は一切存在しません。 当社は資本的に中立的な企業です。
設備投資の状況
今日のリスク管理は装置産業でもあります。 高い開発生産性を維持し、顧客金融機関のニーズに応えていくためには自社保有システムを強化していかねばなりません。 近年は特に金融機関の合併が相次いでおり、顧客保有データと同等規模のテスト環境を整備するだけでも一苦労です。 特に負債サイドALMや日次シミュレーションを実現するためには、多大なハードウェア投資を必要とします。 このため、引き続き高水準の設備投資を行っております。
とはいえ、経費面における最大の費目は人件費であり、財務上の設備投資が占める割合は僅少です。 これは実質的に人への投資=設備投資という研究開発型企業に特有の体質です。 当社における給与曲線はシステム開発各社に比べて大きく上方に乖離しており、形態としては金融機関のそれに似ています。
業務環境
当社の特徴
当社は自社内に研究開発リソースを持つ独立系システムベンダーであり、ALM・収益管理、信用リスク管理、市場リスク管理、オペレーショナルリスク管理をはじめとする金融ミドルオフィス系システム(=金融リスク管理システム)を開発販売しています。
当社は業種分類的には情報サービス業に属しますが、非常に専門性の高い分野に特化していることから事業特性としてはコンサルティング業に類似しています。 人員的にも金融業または研究者からの転向者ばかりであり、いわゆる情報サービス系企業の雰囲気とは大きく社風が異なります。
需要動向
金融リスク管理分野の需要はここ数年伸びてはおりません。 金融機関の合併が相次いだ結果、国際業務を行いうる金融機関はどの分野でも片手の指で数えられるくらいに減りました。 上位金融機関にのみ要求されるような高度なリスク管理システムを開発したとしても、販売先は限られてしまいます。 このため、この分野に残る企業は漸次減少しています(「コラム: 減り行くリスク管理専業企業」参照)。
その一方で、金融リスク管理の技術革新と成熟化は進行しており、経験の有無が新規参入の障壁になっています。 ともすれば現在でも異分野からの新規参入者がありますが、現実の壁は厚く、挫折するケースが大半であると言えそうです(「コラム: 不発に終わったオペレーショナルリスク計量化理論」参照)。
実は、このような外的環境が皮肉にも当社への需要集中をもたらしている側面があります。 現在、銀行業に関しては、代表的なリスク管理手法であるVaR(バリューアットリスク)の普及が一巡し、いわゆるBasel II(新BIS)対応も最終段階を迎えていることから、リスク管理に関する需要は旺盛とは言えません。 他方、生命保険、損害保険業態に関しては、会計制度の見直しがバリューベースのリスク管理への志向を促しており、引き続き一定のリスク管理システムに対する需要があります。 また、超金融緩和もいずれ出口になることから、ALMシステムへの需要もそこそこあるという状況です。 これに対して、ベンダー側の弱体化が進んだために、多くの商談においては意味のあるコンペティションになっていないというのが実態ではないでしょうか。 当社は政治的な要因が働くケースなど、開発プロジェクトの着地が懸念されるケースでは受注しない、逆に受注した場合には最後まで職務を遂行するという形でこれまでやってまいりました。 その結果、これまでの何年かの間にも多くの商談を逃したはずなのですが、現在に至ってみれば非常な繁忙状態にあるわけです。
今期の方針
このような外部環境、内部要因を鑑みて、今期は粛々と受注残をこなすことにしたいと思います。 今期から来期にかけての受注残はきわめて多いのですが、長期的に高い水準の需要が続くとは言えませんから、引き続き採用面でも厳選していきたいと考えています。 すなわち会社の陣容を拡大するわけではありませんから、多忙な毎日が続くことが予想されます。
とはいえ、研究開発を怠っているわけではありません(「コラム: 動的シミュレーション技術の将来」参照)。 陳腐な表現ですが、当社はこの分野の匠のようなものであり、技術にかける頑固一徹さがなければ我々が存在する意味はないと考えるのです。 これは社会的使命としても重要な責任であると考えており、長距離ランナーの孤独に耐える覚悟です。
事業リスクの回避
当社にとっての主な事業リスクは、知的所有権関係と開発プロジェクトのリスクです。 知的所有権については、商標登録、著作権登録、および特許申請によって防御しております。
開発プロジェクトのリスクについては次のように考えます。 当社には、金融機関におけるシステム開発に関しては発注側・受注側の双方から長年の経験があります。 資本面の充実によって大型プロジェクト案件に耐えうるだけの財務体力もついて参りました。 それでもなお、仮に開発プロジェクトのリスクが現実のものとなった場合、売掛金回収期間の長期化と経営資源固定化により経営悪化が不可避です。 また何よりも風評の悪化を懸念しますから、中途でプロジェクトをやめるわけにはいきません。 受注前段階において開発リスクを案件別に評価し、成功確率が低く危険と判断したならば、商談見送りも辞さない方針をこれまで通り堅持したいと思います。
そのほか、当社の顧客に対しては、顧客、当社、(財)ソフトウェア情報センターの三者間でのソフトウェア・エスクロウ契約締結を促しており、当社に万が一の事態が起きた場合にはソースコードを含む全預託物が譲渡されるようにしております。
どうか今後とも一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
ニューメリカルテクノロジーズ株式会社
代表取締役社長 鳥居 秀行