概況
今会計年度(1999年4月~2000年3月)は、前期比売上高3割増と前期に続いて業績好調に推移しました。 また、経費支出を抑える一方、個別案件に特段の引掛かり等もなく、高水準の利益率を確保することができました。 創業以来の黒字・無借金経営であり増収増益です。 この結果、数字的には純資産、利益水準ともに店頭市場公開基準まで到達したことになります。
当期売上高
366,407,955円
資産の状況
安全性と流動性を重視し、大口定期を中心に複数金融機関に分散して運用しております。
資本の状況
資本金 50,000,000円 + 準備金 119,089,000円
(注)資本勘定の119,089,000円は法令に定めるプログラム等準備金。 租税特別措置法第20条の2第1項及び第57条第1項の表の第1号の中欄のロに規定する汎用プログラム(制御プログラム以外のもの)として、情報処理振興事業協会にソフトウェア登録。 登録番号 25295。 登録年月日平成11年2月28日。
当社役員が株式を100%保有しており、外部との資本関係はありません。
設備投資の状況
当社の顧客である金融機関への支援能力維持と、業界内における市場競争力の維持を念頭に置けば、自社ノウハウ蓄積の重要性については言うまでもありません。 特に金融機関から見た場合、当社はR&D部門のアウトソーシングとも受け取れるはずです。 このため当社では、大学、学会関係者との密接な連携のほか、並列UNIXサーバーなどのハードウェア関連の設備投資を積極的に実施しております。
今期の事業方針
当社は、自社内に研究開発リソースを持つ日本国内で唯一の独立系システムベンダーというユニークな立場にあります。 現在、信用リスクを中心とする金融リスク管理システムの分野において最大シェアの位置にあります。 現在の顧客は、都市銀行2、系統金融機関1、信託銀行1、となっており、上位金融機関を顧客として確固たる地位を築きつつあります。
当社の主力業務である金融リスク管理システムの分野は、1980年代後半から1990年代半ばにかけて、ALM (Asset Liability Management)、VaR (Value at Risk)、の2つの分野で急拡大しました。 国内の市場動向を歴史的に追ってみますと、初期の段階では国内大手ベンダーへの委託開発が中心であり、1件あたり数十億円を越す大型プロジェクト案件の形で受注が進みました。 しかしながら、(a)市場系・国際系金融分野での業務ノウハウ不足、(b)当時ホストからの移行期にあったオープン系システムでの未熟な技術スキル、(c)納品後サポートやバージョンアップ対応の拙さ、などが足枷となって徐々に国内大手ベンダーでは大手金融機関のニーズを満たせなくなりました。 こうしてその後、1990年代前半になると外資系システムベンダーの活躍が目立ち、国内大手ベンダーはその代理販売に徹する市場となりました。 ところがこれもまた、(a)米国流の輸入品で国内金融機関のニーズに合わない、(b)宣伝と実態との大きな落差が生んだ信頼喪失、(c)単年度売上主義で参入撤退を繰り返し安定しないサポート、などが顧客から嫌気されて最近では退潮が目立ちます。 実際、ここ2、3年の新規参入も後発VaRベンダーの加アルゴリズミックス社、米JPモルガンから独立したRMG日本法人程度にとどまっております。
むしろ最近の動きを見ますと、事情に疎いシステム関係や金融関係の会社あるいはコスト度外視の大手がこの分野に参入しては、当然ながらうまくいかず、最後に思い切った低価格路線を試した後、不採算に耐えられずに撤退していくパターンが目立ちます。 古くから本邦金融機関の実情に精通しているベンダーはかえって参入を避けており、より利益率の高いネットワーク関連など他のIT分野に経営資源をシフトしているようです。 同じITと言っても、このリスク管理システムの分野では金融機関サイドの投資予算は絞られたままであり、市場の潜在成長力は大きくありません。 しかも、他の金融システム分野に比べて極めて高い専門性、米国流の模倣や輸入では通用しないビジネススタイル、実務経験者にしかわからない非公開情報が壁であり、非常に難しい分野です。 また、金融機関内部での独自開発組を除けば、上位金融機関では当社、地銀以下ではNTTデータがシェアを握っており、参入障壁も高いと言えそうです。 我々自身が技術レベルを年々向上していることもあって、対抗するには持続的な研究開発が要求され必要コストも上昇、長期的な顧客サポートを維持できる利益の計上は容易ではありません。 すなわち、既存国内ベンダーはもちろんのこと海外の有力ベンダーや大手コンサルティングファームでさえこの市場では大きく劣後するのが実態です。 言わば典型的なニッチ市場が形成されており、当社にとっての潜在的競合先も年々減少しています。
こうして分析して参りますと、当社にとって外部からの潜在的脅威は、既存同業他社やコンサル各社あるいは大手システムベンダーではなく、有力金融機関内で育ち内情に通じた専門スタッフが独立起業するケースのように思えてなりません。 そこで可能性ある人材の状況を考えますと、多くは外資系投資銀行やコンサルティング各社に流出するなど職種転換し、邦銀に残った人材も高齢化し相応の地位役職に就き組織に定着して人材の不胎化が進行しています。 つまり、数量的には限られるわけですが、業務のインサイダーだけにそのプロフェッショナルな実力は既存のメーカーや大学あるいは研究機関所属スタッフなどとは比べようもなく侮れません。 もし今後そのような方が独立されるケースがあれば、積極的にアライアンスを組むなどの方策を考えるべきでしょう。 他方、短期的な経営上のリスク要因は外部要因ではなく、市場の潜在成長力を無視した放漫経営・過大投資を行うなど当社の内部にありうるとみられます。
以上の現状を踏まえて今期の業務方針を以下のように策定し、今後とも顧客の期待に応えていく方針です。
(1)既存顧客への持続的サポート
市場全体の伸びに限界がある中では、「焼き畑」的な顧客軽視の営業姿勢は致命的です。 外資系ベンダーに対する態度の変化を見ても、わが国金融機関には従来根強かった「青い目信仰」が単年度売上ばかりを追う姿勢への警戒感へと変化しており、より長期的な営業姿勢とサポート力が問われております。 当社の既存顧客も金融再編の只中にあり、今後のニーズも複雑化することが予想されます。 新年度も当初から大手金融機関とのプロジェクトが始まるわけですが、将来の成長の鍵はそうした既存顧客のニーズに応えて、長期的な信頼関係を維持する点にあると考えます。
(2)エンジニアリングの追求
当社は数学系・金融系の実力エンジニアを主体とする研究開発型企業です。 この分野においては、現在も内外のベンダーおよび有力コンサルティング会社各社に対して圧倒的な技術的優位を誇っております。 持ち前の金融業務のノウハウを見てコンサルティング会社とよく比較される当社でありますが、やはり本質的にはシステムの会社です。 不断の研究開発と高信頼性・高品質が重要であることは、製造業の他分野と何ら変わりなく、現場重視、エンジニア尊重の姿勢を堅持したいと考えております。
(3)利益重視経営、単年度黒字体質の堅持
当社は最近流行のインターネット関連企業ではありませんが、短期間の成長ぶりが目立ちます。 このため、株式公開益を狙ったベンチャーキャピタル各社からの引き合いも少なくありません。 しかし、当社の非常に高い自己資本比率、手元流動性比率を見る限り、バランスシートの内容は創業期の企業よりもある程度の年数が経過した中堅企業に近いと言えるでしょう。 つまり、外部資本を取り入れてまで事業資金を調達するニーズに乏しいことは明らかです。 反面、当社はまだまだ発展途上の企業です。 金融機関出身経営者の保守的体質とも言われかねませんが経営基盤の充実をなお重視し、少数精鋭・スーパーエンジニア中心の体制を堅持、固定費抑制と高い生産性諸比率、売上高よりも利益水準を重視する経営方針を貫く方針です。
どうか今後とも一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
ニューメリカルテクノロジーズ株式会社
代表取締役社長 鳥居 秀行