決算期変更について
当社の初年度にあたり、本決算期日を3月末日とし、1998年7月1日から1999年3月31日までの9カ月決算と致します。
業務環境
現在、金融リスク管理に関するシステム市場全体を見渡しますと、主要な分野として、(1)ALM (Asset Liability Management、アセットライアビリティマネジメント)、(2)市場VaR(Value at Risk、バリューアットリスク)、(3)審査およびスコアリング、(4)信用VaR、(5)ポートフォリオ/ポジション管理、をあげることができます。
(1)のALMシステムについては古くからホスト系システム主体に構築されており、持続的な更新需要が存在します。 (2)の市場VaRシステムは、国際決済銀行による市場リスク規制(いわゆる第2次BIS規制)を契機とし、1994年頃から普及期を迎えたものです。 現在では大手金融機関はほぼ導入を終えており、需要も一服感があります。 (3)の審査およびスコアリングの分野は、歴史としてはかなり古いものです。 比較的最近に新たな技術開発の試みが行われておりますが、大きなうねりにはなっておりません。 (4)の信用VaRシステムは、市場VaR技術の拡大発展型にあたり、時代の要請を受けて根強い需要があります。 しかしながら、広範囲の業務知識を要する上に、市場VaRに比べて遥かに複雑かつ高度な数値シミュレーション技術を必要とするため難易度が高く、現在ようやく普及期を迎えつつある段階に過ぎません。 (5)のポートフォリオ/ポジション管理システムは、ディーリングシステムとの組み合わせ需要が堅調にあります。
このように金融リスク管理に関するシステム需要は、昨今の社会情勢、当局規制の動向、金融業界内の状況を映しながら分野別には明暗あるものの、総じて見れば堅調に推移しております。 当社は信用リスク管理システムを主力とする研究開発型企業であり、自社内に研究開発リソースを持つ日本国内で唯一の独立系システムベンダーというユニークな立場にあります。 このため、システム販売およびコンサルティングへの需要を背景として、当社は設立初年度を順調に終えることが出来ました。
当期売上高
270,057,302円
借入金の状況
長期借入金、短期借入金ともにありません。
資本の状況
資本金 30,000,000円+プログラム等準備金(注) 51,170,000円
(注)租税特別措置法第20条の2第1項及び第57条第1項の表の第1号の中欄のロに規定する汎用プログラム(制御プログラム以外のもの)として、情報処理振興事業協会にソフトウェア登録。 登録番号25295。 登録年月日 平成11年2月28日。
設備投資の状況
当社の顧客である金融機関への支援能力維持と、業界内における市場競争力の維持を念頭に置けば、自社ノウハウ蓄積の重要性については言うまでもありません。 特に金融機関から見た場合、当社はR&D部門のアウトソーシングとも受け取れるはずです。 このため当社では、大学、学会関係者との密接な連携のほか、システム関連の設備投資を積極的に実施しております。 例えば当社の研究開発用設備は計算サーバーだけで各社の中上位機種ワークステーションを中心に総計10プロセッサの並列処理環境を備えており、主記憶は10GBytes、二次記憶容量は約400GBytesに達する大規模なものです。 使用OSはDigital UNIX, Sun Solaris, Windows NT、使用データベースはOracle8 Enterprise Edition、Sybaseによる強力な計算環境を構築しております。
今期の事業方針
前期中に当社は、当社開発の信用リスク管理製品 CreditBrowserTM を Version 1.5 から 2.0 にバージョンアップ致しました。 先頃、同製品は情報処理振興事業協会の汎用プログラム認定を受け、名実ともに当社の汎用パッケージ製品としての形態を整えました。 新年度以降においても引き続き本製品への開発投資を積極的に行い、続く Version 3.0 以降への機能向上を計画しております。 そのほか、関連する事業として市場VaRシステム、規制対応特化型の信用リスク管理システムの市場投入を予定しております。 特に市場VaRシステムは当社にとって1996年のFORCE市場リスク管理システム以来の再参入となります。 市場VaRシステムの分野は、需要の最盛期を過ぎ、技術的にもこなれたとはいえ、高機能の製品が市場には未だにありません。 CreditBrowserTM で培ったノウハウを安価に提供することにより、今後とも市場の期待に応えていく方針です。
今期の業務施策をまとめますと以下の通りです。
(1)最高品質の探求
当社は数学系・金融系の実力エンジニアを主体とする研究開発型企業です。 数値処理分野において、他社の追随を許さぬ品質を追求します。 日本国内だけのローカルスタンダードに終わらない、世界水準での競争力のある製品開発を目指しております。
(2)自社技術の蓄積
リスク管理のようなローカライズが必須の分野においては、外部からの借り物技術では即座に製品品質・顧客サポート能力の低下を意味します。 咋今の日本では海外製品や技術の仲立ちビジネスが多く、自主独立組は少数派になりつつありますが、当社は自前のノウハウによる研究開発に注力する方針です。
(3)強靭な経営体質の構築
技術水準の維持には高水準の研究開発投資が必要です。 数値シミュレーションという非常に高コストな分野に位置する当社は、その設備投資面を支えるべく強靭な経営体質の構築を目指しています。 少数精鋭・スーパーエンジニア中心の体制を堅持し、固定費抑制と高い生産性諸比率の維持に努めます。
どうか今後とも一層のご支援、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
ニューメリカルテクノロジーズ株式会社
代表取締役社長 鳥居 秀行